今回はドイツの工具メーカーであるHAZET(ハゼット)のラチェットを実際に使ってみた個人的感想や評価についてです!
日本ではドイツの工具メーカーは、どちらかと言うとマイナーである上に非常に高額な商品が多いため、興味はあるけど買う決心がつかない、身近で使っている人がいないからリアルな情報が聞けない、という人も多いと思います。
そこで当記事ではHAZET(ハゼット)のラチェットを実際に使ってみた感想や評価・レビューを書いてみました。
しかし、ハゼットのラチェットと言っても色々な種類、色々なサイズがあり、1つの記事にまとめようとすると長文になってしまうので、今回はソケットの差込口サイズが1/4インチ(6.35mm)のラチェットに絞って評価していきます。
※3/8インチ、1/2インチについては後日、追記予定ですので、しばらくお待ちください
ハゼットのラチェットの評価についてのプロローグ
日頃のハゼットのラチェットの活用について
本題に入る前に軽く自己紹介も兼ねて、普段ハゼットのラチェットを、どんな目的で使っているかを説明しておきます。
なぜなら、ハゼットのラチェットについて評価をするからには当然、ハゼットのラチェットを実際に使ったことがなければ説得力がありません。
Amazonなどのネット通販のレビューや、他人のSNSに書かれた感想を引用するなど、インターネット上の情報をかき集めただけの記事では、たかが知れています。
同様に、他人から聞いた情報を、あたかも自分の知識のように語られた記事も信憑性が低いと思います。
というわけで本題に入る前に、普段ハゼットのラチェットを、どんな目的で使っているかという所から軽い自己紹介も兼ねて軽く説明します。
10年以上も前ですが、この記事を書いている人(自分)は、過去に自動車整備士の仕事をしていました。
一応は一級、二級ガソリン・ジーゼルの自動車整備士資格も持っています。
今では、現役で自動車整備士の仕事はしていないものの、趣味でサーキットを走りに行ったり、86・BRZのワンメイクレースにメカニック要因として参加したりする時などに工具を使って作業をしますし、自宅で自分の車を整備する時にも使います。
なので、整備工場のような現場で使う時だけではなく、自宅でDIYする時や、どこかに持っていく時などの便利性ですとか、コストパフォーマンスについても評価やレビューをしていこうと思います。
ハゼットについて
ご存知の方も多いでしょうが、ハゼットについてあまり詳しくない人もいると思いますので一応、ハゼットについて軽く説明しておきます。
日本では、あまり有名ではなく、自動車整備士のようなプロのメカニックでもハゼットをご存知ない方が割と多いです。
インスタやX(旧Twitter)でも、スナップオンやKTC・ネプロスの工具をアップしている人は多くいますが、ハゼットの工具をアップしている人は少数です…。
それくらい日本ではマイナーな工具メーカーなのですが、実は世界的には非常に有名、且つ著名な工具メーカーなのです!
決してハゼットという工具メーカーが小規模な会社であったり、歴史が浅かったり、工具の出来が悪いわけではなく、単に日本人が無知なだけです…。
メルセデスベンツやフォルクスワーゲンなど多くのヨーロッパ車の推奨工具に認定されていたり、フェラーリの車載工具に採用されていたり、BMW・アウディ・ポルシェなどの専用工具を製造しているなど自動車業界でも高い信頼を得ています。
モータースポーツ部門でもポルシェモータースポーツのサポートも行っており、日本でもPCCJ(ポルシェ・カレラ・カップ・ジャパン)のオフィシャルスポンサーをしているなど、色々な分野で信頼を得ている著名な工具メーカーなのです!
ハゼットの工具の特徴
独自の鋼材を使用して作られたハゼットの工具は、とにかく硬く、それでいて粘り強さも兼ね揃えているので、脆くて衝撃に弱いということは一切なく、強度が尋常ではありません。
ラチェットにおいても、その強度は例外ではありません。
普通、ラチェットという工具はメガネレンチやスピンナハンドルなどと比べると、素早くボルト・ナットなどを脱着できるというメリットがある反面、強度が劣るというデメリットがあります。
そのため普通でしたら強いトルクをかける時はメガネレンチやスピンナハンドルを使用し、そこまで強いトルクをかけない場面ではラチェットを使用するというふうに使い分けて工具を選ぶ必要があります。
ですが、ハゼットのラチェットは非常識なくらい高強度なので、こういった使い分けをしなくても、ある程度は作業ができてしまいます。
ラチェットに限らずハゼットの工具は全般的に、とにかく硬く、高強度でガッチリとした物が好みという方におすすめです!
コストパフォーマンスに関しては考え方次第になってしまうのですが、販売価格は非常に高価であるため、イニシャルコストはかなり高いですが、滅多なことでは壊れないため、無くしさえしなければ非常に長く使えるのでランニングコストは良いです!
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ハゼット90ギア 1/4 スタンダードラチェット 863HPの評価
ハゼット90ギア スタンダードラチェットの特徴
HAZET製、新型90ギアを搭載したソケットの差込口1/4インチ(6.35mm)のスタンダードラチェットです。
グリップも新しくなり、旧型の物よりも滑りにくくなり、吊り下げ用の穴も追加されました。
1/4ボディながら耐荷重は120Nmと異常なくらいの数値を叩き出しており、HAZETらしい頑丈さに拘ったラチェットです。
旧型の20ギアから90ギアと他ギア化したことで振り角は僅か4°と、かなり細かくなりましたので、狭く奥まった所で威力を発揮します。
1/4インチサイズのラチェットレンチとしてはスタンダードな大きさです。
- 全長:116mm
- 重量:79.5g
(メーカーホームページでは80gと記載) - ギア数:90ギア
- 振り角:4°
- ドライブ角:1/4dr(6.35mm)
- 耐久トルク:120Nm
ハゼット90ギア スタンダードラチェットのメリット
耐久トルクが120Nmと、1/4インチサイズのコンパクトラチェットとは思えない耐久性です。
ちなみに工具の王様と言われているスナップオンのラチェットですと、1/4インチサイズのギヤ数72枚のもので、丸形ヘッド・小判型ヘッド共に推奨最大トルク38Nmとなっています。
1サイズ大きい3/8インチサイズの100ギアでも推奨最大トルク108Nmとなっています。
世界的に有名であり、高級工具でお馴染みであることから日本でも非常に人気があり、SNSでも工具自慢をする時の定番となっているスナップオンですが、それをはるかに上回る耐久性となっています。
ヘッドの厚みも薄くできているので非常に狭いスペースでありながらも強いトルクをかけなければならない箇所での作業時に重宝します!
ギアの枚数も1/4のラチェットとしては数少ない90ギアと多ギアとなっています。
自分の知る限り、他のメーカーで90ギアの1/4ラチェットと言えば、ネプロスかマックツールのラチェットくらいでしょうか?
コンパクトボディで高強度な割には空転トルクも少なくスムーズに回転します。
また新型90ギアになってからヘッドにネジを使用しない構造になったので、異物混入に厳しい食品業界や航空機分野でも安心して使えるようになりました。
それとハゼットの工具って日本では使っている人が少ないので、特別感やオリジナリティがあるという自己満足に浸れたり、複数人で作業をしている際に他人の工具と混ざってしまった時に見分けがつきやすいという、ちょっとしたメリットもあります。
ハゼット90ギア スタンダードラチェットのデメリット
耐久トルクが120Nmと高強度な割には空転トルクも少なく、スムーズに回転するのですが、スタビレー、スナップオン、コーケンZ-EALなどのラチェットに比べると少し硬めであり、切り替えレバーの動きも少し硬めなので、早回しのしやすさや、片手で扱う時の使いやすさは少し劣るかもしれません。
人によっては「1/4サイズのラチェットに耐久トルク120Nmも要らないよ」と思う人もいると思います。
耐久トルクが120Nmとなってはいるものの、全長116mmという短いラチェットに120Nmもの力を、そもそもかけるか?
ラチェットのハンドル部分に100kg以上も重さをかけなければなりませんが、そこまでするくらいならば、もっと大きいサイズのラチェットを使うか、メガネレンチやスピンナーハンドルなど別の工具を使うのが普通です。
それにラチェットと合わせて使用するソケットやエクステンションバーも、かなり強度の強いものを使わなければ割れたり折れたりしてしまいます。
それと値段も定価ですと¥19,250と非常に高価であり、コストパフォーマンスは良くありません。
ハゼット90ギア スタンダードラチェットの評価・レビュー・感想
非常にコンパクトサイズながらも異常なくらい高強度で剛性感のあるラチェットです!
空転時も「カチッ!カチッ!」とカッチリ感のあるフィーリングであり、ガタや遊びも少ないので使っていると、とても頼もしさを感じます。
1/4インチというコンパクトサイズのラチェットですと、なかなか「多ギア・高強度・回転の滑らかさ・空転トルクの低さ」等の要素を全て満たすのは非常に困難なのですが、ハゼットのラチェットは、これらの要素を高次元でクリアしています。
ただでさえ1/4インチというコンパクトサイズのラチェットで90ギアと多ギアなラチェットは現状、他メーカーではあまり出していない上に、耐久トルクが120Nmというのは非常に魅力的です。
ただし空転トルクだけで言えばスタビレー、スナップオン、コーケンZ-EAL等のラチェットの方が軽いため、そこまで耐久性を必要としない場面では上記3メーカーのラチェットの方が使いやすいかなと思います。
ネプロスのラチェットよりかは僅かに軽いか、同じくらいだと思います。
とは言え、他のメーカーも含めた、1/4インチサイズのラチェット全般の中では、空転トルクが少なくスムーズに回転する方ではあるので、決して使いにくいわけではありません。
どうしても空転トルクが気になるようでしたら、ソケットやエクステンションバーに滑り止めが施されているものと組み合わせて使用したり、クイックスピンナと合わせて使用すると良いでしょう。
個人的な感想としてハゼットの90ギアのラチェットは、ネプロスのラチェットの上位版といった感じかなと思います。
ハゼット 90ギア 1/4 スタンダードプッシュリリースラチェット 863HPSの評価
ハゼット 90ギア スタンダードプッシュリリースラチェット 863HPSの特徴
こちらもHAZET製、新型90ギアを搭載したラチェットです。
先ほど紹介した863HPのラチェットに、ソケットが外しやすい様にプッシュリリースボタンが追加されたものになります。
プッシュリリースボタン無しのものと比べると耐荷重は100Nmと少し劣りますが、1/4インチサイズのラチェットとしては充分すぎる耐久性と言えるでしょう。
- 全長:116mm
- 重量:77.7g(メーカーホームページでは80gと記載)
- ギア数:90ギア
- 振り角:4°
- ドライブ角:1/4dr(6.35mm)
- 耐久トルク:100Nm
ハゼット 90ギア スタンダードプッシュリリースラチェット863HPSのメリット
基本的には先ほど紹介しました863HPのメリットに、プッシュリリースボタンが追加されたことでソケットが脱着しやすくなったというメリットが増えたラチェットになります。
メーカーホームページでは重量80gと記載されているのですが、実際に測ってみると77.7gであり、プッシュリリースボタンが無いタイプよりも2グラムくらい軽いです。
この「2グラム」という僅かな軽さとプッシュリリースボタンが付いていることで、863HPよりも使いやすいと感じるかもしれません。
ハゼット 90ギア スタンダードプッシュリリースラチェット863HPSのデメリット
プッシュリリースボタンが追加された分、863HPより少し強度が低下しています。
それとソケットがボルト・ナットからすっぽ抜けないように、ラチェットのヘッド部分を強く押し付けるように使用したい時は、プッシュリリースボタンが邪魔になる場合があります。
あと、値段が定価だと\20,680となっており、プッシュリリースボタン無しのものよりも少し高いです。
ハゼット 90ギア スタンダードプッシュリリースラチェット863HPSの評価・レビュー・感想
863HPと、ほぼ同等のラチェットであり、大きな違いはプッシュリリースボタンが付いていることと、強度が少しだけ低下していることです。
サイズや重量、握りやすさは、ギアの回転の滑らかさ、切り替えレバーの硬さなどは、ほとんど変わりません。
863HP(プッシュリリースボタン無し)よりも値段が高いからといって863HPS(プッシュリリースボタン有り)の方が上位版かというと、そうとも限らないので、どちらが良いかは時と場合によると思います。
強度と安さを優先するならば863HP、使いやすさを優先するならば863HPSといったところです。
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ハゼット 90ギア ビットラチェット 863HPBの評価
ハゼット 90ギア ビットラチェット 863HPBの特徴
こちらもHAZET製新型90ギアを搭載したビットラチェットです。
863HPのボディにビットを差せるようにしたものになります。
耐久トルクも863HPと同じで120Nmとなっております。
- 全長:116mm
- 重量:74.6g(メーカーホームページでは80gと記載)
- ギア数:90ギア
- 振り角:4°
- 耐久トルク:120Nm
ハゼット 90ギア ビットラチェット 863HPBのメリット
ビットを差し替えることで+ネジ、-ネジ、ヘックス、トルクス等々、色々な物に対応できるようになっています。
もちろん、アダプターを使えば1/4、3/8、1/2など色々なサイズのソケットも使えますので、汎用性が高いです!
汎用性に優れているため
「1本のラチェットで色々な種類のボルトやナットを脱着したい」
「あまり複数本のラチェットを持ち歩きたくない」
といったシチュエーションで重宝します!
ハゼット 90ギア ビットラチェット 863HPBのデメリット
ラチェット自体が非常に高強度すぎる故に、力を掛け過ぎると使用するビットによっては、ビットの方が耐えられず破損してしまったり、ボルトやネジの頭をなめてしまう恐れがあります。
ハゼット 90ギア ビットラチェット 863HPBの評価・レビュー・感想
基本的に性能自体は863HPと、ほぼ同じです。
ビットラチェットとしてはオーバースペックな感じもしますが、ビットを差し替えれば色々なネジ、ボルト・ナットに対応できるのは非常に便利です。
ラチェット自体が高強度すぎるので、使用する際は力の加減に気を付けながら作業するようにしましょう。
できれば使用するビットも同じハゼット製の物を使用するか、PBやWERAのように強度も精度も高い物と組み合わせて使用することをおすすめします。
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ハゼット 20ギア 1/4 クイックリリースラチェットレンチ 863Sの評価
ハゼット 20ギア クイックリリースラチェットレンチ 863Sの特徴
ハゼット90ギア・スタンダードプッシュリリースラチェット(863HPS)の旧モデルのラチェットになります。
863HPSと同じくプッシュリリースボタン付きなのでソケット脱着が簡単にできます。
- 全長:115mm
- 重量:73.4g(メーカーホームページでは70gと記載)
- ギア数:20ギア
- 振り角:18°
- ドライブ角:1/4dr(6.35mm)
- 耐久トルク:???Nm
ハゼット 20ギア クイックリリースラチェットレンチ 863Sのメリット
ハゼット90ギア(863HPS)の旧モデルのラチェットで、ギア数が20枚と少ないですが、空転トルクは863Sの方が軽いですし、ラチェット自体の重量も実測値ですと6グラムほど軽いので、これはこれで使いやすいです!
値段も定価¥15,510と、少し安いのもメリットです。
旧モデル故に、アウトレットセールなどで格安で入手できる機会が多いかもしれません。
実際に僕自身も、楽天市場のアウトレットセールで買いました。
ハゼット 20ギア クイックリリースラチェットレンチ 863Sのデメリット
ギア数が20枚と少ないので新型の90ギアと比べると振り角は大きいです。
それとグリップが新型の物よりも滑りやすいです。
また、新型ほどは、航空整備士や飲食業界に考慮した構造(異物混入対策で、なるべくネジを使わないように作られた構造)ではありません。
あと、もう一つ気になる点として、新型よりも切り替えレバーが小さすぎて指に引っかかりにくく、切り替え操作がし辛いです。
ハゼット 20ギア クイックリリースラチェットレンチ 863Sの評価・レビュー・感想
ハゼット90ギア(863HPS)の旧モデルのラチェットではありますが、旧型だからといって全てにおいて劣っているわけではなく、重量が10グラムほど軽く、空転トルクも軽くて回転がスムーズです。
新型ほどカッチリ感はなく、少しラフな感じではありますが、これはこれで使いやすいです!
グリップも新型の物よりかは少し滑りやすいですが、あまり気にならないレベルです。
そこまでギア数の多さを求めないのであれば、あえて旧モデルの方を選ぶのもアリだと思います。
それと、ラチェットを空転させる時の「カチカチッ!」という音も小さいので、なるべく音を立てず静かに作業をしなければならない場面でも重宝すると思います。