今回は、前回の記事『ハゼットのラチェットを1級整備士が評価したブログ【パート1】』の続きです。
前回はソケットの差込口サイズが1/4インチ(6.35mm)のハゼットのラチェットを4種類ほど紹介し、個人的な評価を書きました。
そして今回のパート2ではスタビレー、スナップオン、DEENのラチェットとハゼットのラチェットを比較し、評価していきます。
比較対象としては、主にラチェットの全長、重量、ギア数、空転トルクなどを比較し、評価していきます。
ハゼットのラチェットと他社のラチェットを比較&評価
3種類のラチェットと比較&評価
前回の記事、パート1で紹介しましたハゼットのラチェット4種類を比較&評価してみました。
今回はハゼットのラチェット4種類と他社のラチェット3種類を比較し、評価していきます。
今回の比較対象は①スタビレーの415QRN、②スナップオンのTK860、③DEENのDNR2-045です。
①スタビレー・80ギア【415QRN】
②スナップオン・60ギア【TK860】
③DEEN・72ギア【DNR2-045】
今回、比較したラチェットは全てソケットの差込口サイズ1/4インチ(6.35mm)です。
ただし、これらは僕が整備する時に使用している物なので新品のデータではありません。
使用年数や使用頻度もバラつきがあるので正確なデータではないのですが、その点についてはご了承下さい。m(_ _)m
前回紹介したハゼットのラチェット4種類のおさらい
ハゼットのラチェットと他社のラチェットを比較する前に、前回のパート1の記事で紹介したハゼットのラチェット4種類のデータをおさらいしましょう。
ハゼットスタンダードラチェット【863HP】
全長 | 重量 | ギア数 | 空転トルク |
116mm | 79.5g | 90枚 | 約2.7cN・m |
※1cN・m=0.01N・m
2.7cN・m=0.027N・mです
ハゼットの1/4サイズの新型ラチェットのスタンダードモデル。
耐久トルクは120N・m。
ハゼットスタンダードプッシュリリースラチェット【863HPS】
全長 | 重量 | ギア数 | 空転トルク |
116mm | 77.7g | 90枚 | 約2.7cN・m |
ハゼットの1/4サイズの新型ラチェットのスタンダードモデルにプッシュリリースボタンが付いているタイプ。
耐久トルクは100N・m。
性能はスタンダードモデルの863HPとほぼ同じだが、863HPよりも重量が1.8g軽く、耐久トルクが20N・m低い。
ハゼットスタンダードラチェット【863HPB】
全長 | 重量 | ギア数 | 空転トルク |
116mm | 74.6g | 90枚 | 約3.8cN・m |
ハゼットの1/4サイズの新型ラチェットのスタンダードモデルをビットで使用できるようにしたタイプ。
耐久トルクは120N・m。
性能はスタンダードモデルの863HPとほぼ同じだが、重量が4.9g軽く、空転トルクが1.1cN・m重い。
ハゼットクイックリリースラチェットレンチ【863S】
全長 | 重量 | ギア数 | 空転トルク |
115mm | 73.4g | 20枚 | 約1.8cN・m |
ハゼットの1/4サイズの旧型モデル。
耐久トルクは不明。
新型のスタンダードモデル863HPと比較するとギア数が20枚と圧倒的に少ないが、重量が863HPよりも6.1g軽く、空転トルクも0.9cN・mほど軽いので使ってみるとハゼットのラチェットらしいカッチリ感はないけど、案外これはこれで使いやすい。
以上、前回のおさらいでした。
これらのデータを元に、他社のラチェットと比較をし、評価をします。
スタビレー80ギア【415QRN】
商品説明
ハゼットと同じドイツの総合ツールメーカーであり、ライバルメーカーでもあるスタビレーのスタンダードモデルのラチェットです。
ハゼットと同様に世界的には非常に著名なメーカーなのですが、派手な物やチャラい物、安物が好きな日本人には、あまり人気がなく、一部の工具通な人や、品質を重要視する人が愛用される、知る人ぞ知る工具メーカーであります。
特にスタビレーのラチェットは日本では、ほとんど使っている人を見かけないレベルなので地味なイメージなのですが、使ってみると意外と使いやすく、
「今までは別のメーカーのラチェットを使っていたけど、スタビレーのラチェットと出会ってからは、スタビレーのラチェットがメインになった!」
という人も案外、多いです。
実は僕自身も、その1人であり、スタビレーのラチェットを買ったのも割と最近です。
スタビレーのラチェットを買う前までは、使いやすさで選ぶならスナップオンのラチェット。
強度で選ぶならハゼットのラチェットかな、という考えだったのですが、スタビレーのラチェットを買ってみたら、すっかり気に入ってしまいました。
全長と重量の比較
全長は117mm、重量が73.4gです。
プッシュリリースボタン付きのラチェット同士を比較するとハゼットのラチェット863HPSや863Sの方が重量が軽いです。
【ハゼット】 | 全長 | 重量 |
863HP | 116mm | 79.5g |
863HPS | 116mm | 77.7g |
863HPB | 116mm | 74.6g |
863S | 115mm | 73.4g |
【スタビレー】 | 全長 | 重量 |
415QRN | 117mm | 79.1g |
ギア数と空転トルクの比較
ギア数80枚、小判型ヘッドのラチェットです。
割と最近に買ったものなので、ほぼ新品のデータになります。
空転トルクの測定の結果は、約1.7cN・m(約0.017N・m)でした。
ハゼットの新型ラチェットと比較するとギア数は10枚ほど少ないものの、空転トルクが非常に軽いので使いやすく、ギア数の少なさはほとんど感じないです。
【ハゼット】 | ギア数 | 空転トルク |
863HP | 90枚 | 約2.7cN・m |
863HPS | 90枚 | 約2.7cN・m |
863HPB | 90枚 | 約3.8cN・m |
863S | 20枚 | 約1.8cN・m |
【スタビレー】 | ギア数 | 空転トルク |
415QRN | 80枚 | 約1.7cN・m |
ハゼットとスタビレーのラチェットの評価
ハゼットの旧型ラチェット863S並に空転トルクが軽くてギア数も80枚あるので、個人的にはスタビレーのラチェットの方が使いやすいと思います。
1/4サイズのラチェットは、主に狭いスペースでの作業で使われたり、軽い力で作業したいという時に重宝しやすいため、空転トルクが少ないというのは非常に魅力的です。
ただし、スペースが狭い上に、ものすごい強いトルクをかけなければならないという時も勿論あります。
その場合は非常識なくらい高強度なハゼットのラチェットの方が有利です。
高強度でガッチリ感のあるラチェットの方がお好みでしたらハゼットのラチェット。
回転が滑らかさ、フリクションの少なさを重視するならばスタビレーのラチェットがおすすめです。
スナップオン60ギア【TK860】と比較・評価
商品説明
スナップオン・ラウンドヘッド・ショートラチェットTK860(60ギア)で、TKN72(72ギア)の旧モデルです。
「ラウンドヘッド」は丸形の頭という意味。
TK860はスタンダードモデルではなく、軽量コンパクトさと空転トルクの少なさを重視されたラチェットです。
中古で買った物なので具体的な使用頻度や年数は不明ですが、ある程度の劣化や使用感はあります。
全長と重量の比較
全長は78mm、重量が65.0gです。
ハゼットのラチェットと比較するとスナップオンのTK860は、とにかく軽量コンパクトさと空転トルクの少なさを重視されたラチェットであるため、全長も重量もTK860の方が小さく、そして軽いです。
【ハゼット】 | 全長 | 重量 |
863HP | 116mm | 79.5g |
863HPS | 116mm | 77.7g |
863HPB | 116mm | 74.6g |
863S | 115mm | 73.4g |
【スナップオン】 | 全長 | 重量 |
TK860 | 78mm | 65.0g |
ギア数と空転トルクの比較
ギア数60枚、丸型ヘッドのラチェットです。
空転トルクの測定の結果は、約1.6cN・m(約0.016N・m)でした。
かなり古いモデルなのでギア数は60枚と少なめではありますが、軽量コンパクトさと低フリクションさを重視されたラチェットだけあって空転トルクの少なさは、かなりのものです。
【ハゼット】 | ギア数 | 空転トルク |
863HP | 90枚 | 約2.7cN・m |
863HPS | 90枚 | 約2.7cN・m |
863HPB | 90枚 | 約3.8cN・m |
863S | 20枚 | 約1.8cN・m |
【スナップオン】 | ギア数 | 空転トルク |
TK860 | 60枚 | 約1.6cN・m |
ちなみにですが、スナップオンの新しいモデルのラチェットのギア数は小判型ヘッド・丸形ヘッド共に72ギアです。
ハゼットとスナップオンのラチェットの評価
非常に軽量コンパクト・低フリクションなので、強いトルクをかけない場面では、かなり使いやすいです。
ですが、非常に短いので大抵のボルト&ナットには太刀打ちできないため、使える場面は限られると思います。
耐久トルクは不明ですが、新しいモデルのTNF72やT72でも推奨最大トルク38N・mとなっているので恐らく同じくらいか、それよりも低いと思いますので、一発目に緩める時や本締めする時は別の工具で作業する事が多いです。
ギア数も3/8サイズでしたら80ギアや100ギアも出ていますが、1/4サイズですと新しいモデルでも72ギアです。
スタビレーのラチェットの時と似たような評価になりますが、とにかく強いトルクをかける場合やギア数の多さを重視するならばハゼットのラチェット。
回転の滑らかさ、フリクションの少なさを重視するならばスナップオンのラチェットがおすすめです。
DEEN72ギア【DNR2-045】と比較・評価
商品説明
工具の専門店ファクトリーギアのオリジナルブランドである「DEEN」のラチェットです。
DEENのラチェットは基本的に丸形ヘッドのラチェットを採用しているのですが、グリップや、形状、長さ、首振りorリジットなど複数の種類を組み合わせて色々なパターンを販売しています。
今回紹介するDNR2-045はストレートタイプ+ラバーグリップの1/4サイズの中のスタンダードモデルです。
17年くらい前に買った物なので、ある程度の劣化や使用感はあります。
それと空転トルクを測定するにあたって、ちょっと都合が悪いのですがファクトリーギアの店員さん曰く、DEENのラチェットは、ラチェット内部のグリスの硬さを物によって意図的に変えているらしいので、空転トルクの測定結果は、あくまでも一例になってしまいます。
全長と重量の比較
全長は118mm、重量が91.7gです。
ハゼットのラチェットと比較するとDEENのDNR2-045は、全長はあまり変わらない割に重量が重いです。
【ハゼット】 | 全長 | 重量 |
863HP | 116mm | 79.5g |
863HPS | 116mm | 77.7g |
863HPB | 116mm | 74.6g |
863S | 115mm | 73.4g |
【DEEN】 | 全長 | 重量 |
DNR2-045 | 118mm | 91.7g |
ギア数と空転トルクの比較
ギア数72枚、丸型ヘッドのラチェットです。
空転トルクの測定の結果は、約4.2cN・m(約0.042N・m)でした。
ハゼットの新型ラチェットと比較するとギア数は72枚と少なく、空転トルクは約4.2cN・mと、かなり重くて硬いフィーリングです。
【ハゼット】 | ギア数 | 空転トルク |
863HP | 90枚 | 約2.7cN・m |
863HPS | 90枚 | 約2.7cN・m |
863HPB | 90枚 | 約3.8cN・m |
863S | 20枚 | 約1.8cN・m |
【DEEN】 | ギア数 | 空転トルク |
DNR2-045 | 72枚 | 約4.2cN・m |
ハゼットとスナップオンのラチェットの評価
一昔前のラチェットとしては、なかなか良く、なにより値段が6000~7000円くらいで買えるのでハゼット、スタビレー、スナップオンのような高価なラチェットが買えない人にとっては嬉しい商品でした。
ですが、近年では、色々なメーカーが多ギア+高強度+低フリクションで使いやすいラチェットを出すようになってきました。
それに対してDEENのラチェットは、グリップの種類や有無、シャフトの長さ、首振りタイプなど色々なバリエーションを出すようになってきましたが、1/4サイズのヘッド自体は丸形ヘッド+72ギアと、特に大きな改良やマイナーチェンジはされてなさそうです。
耐久トルクは不明ですが、DEENの3/8サイズのスイベルラチェットで3回ほど強い力をかけてラチェット内部がダメになったことがあるので、1/4もそこまで強度はないと思います。
それとラバーグリップに限ったことなのですが、ちょっと力を掛け過ぎただけでグリップがすっぽ抜けます…。
なので個人的には樹脂グリップの物か、グリップ無しのタイプがおすすめです。
ただ、ラチェット内部のギアが破損した場合は、一応リペアキットが出ているので修理は可能です。
それと、もう1つ気になるのがヘッドの厚みです。
DEENのラチェットはヘッドの厚みが27mmあり、1/4サイズのラチェットとしては、かなり厚みがある方です。
ハゼットのラチェットの場合、新型のスタンダードモデル863HPでは20.5mm。
新型のプッシュリリースボタン付きの863HPSが21.0mm。
その他、スタビレーの415QRNが20.0mm、スナップオンのTK860が22.0mmでした。
ハゼットのラチェットだけではなく、スタビレーやスナップオンのラチェットと比べても、ヘッドの厚みが大きく、狭いスペースでの作業では不利になりそうです。
ハゼットのラチェットと比較すると、DEENのラチェットは基本的にコストパフォーマンスを重視している人向けのラチェットになります。
まとめ
全長と重量のおさらい
【ハゼット】 | 全長 | 重量 |
863HP | 116mm | 79.5g |
863HPS | 116mm | 77.7g |
863HPB | 116mm | 74.6g |
863S | 115mm | 73.4g |
【スタビレー】 | 全長 | 重量 |
415QRN | 117mm | 79.1g |
【スナップオン】 | 全長 | 重量 |
TK860 | 78mm | 65.0g |
【DEEN】 | 全長 | 重量 |
DNR2-045 | 118mm | 91.7g |
ギア数と空転トルクのおさらい
【ハゼット】 | ギア数 | 空転トルク |
863HP | 90枚 | 約2.7cN・m |
863HPS | 90枚 | 約2.7cN・m |
863HPB | 90枚 | 約3.8cN・m |
863S | 20枚 | 約1.8cN・m |
【スタビレー】 | ギア数 | 空転トルク |
415QRN | 80枚 | 約1.7cN・m |
【スナップオン】 | ギア数 | 空転トルク |
TK860 | 60枚 | 約1.6cN・m |
【DEEN】 | ギア数 | 空転トルク |
DNR2-045 | 72枚 | 約4.2cN・m |
ハゼットのラチェットの比較・評価のまとめ
ハゼットの新型ラチェットは空転トルクは少し重いですが、重量は割と軽く、ギア数は90枚と1/4サイズの中ではかなり多い方であり、そして何より尋常じゃない強度が最大の強みです。
日本ではマイナーかもしれませんが、非常に頼もしいおすすめなラチェットです!
今回、スナップオンのラチェットだけはスタンダードモデルを持っていなかったのでショートタイプのラチェットを比較対象にしましたが、もしスタンダードモデルを入手したら追記しようと思います。
それと3/8サイズについては続きの記事『ハゼットのラチェットを1級整備士が評価したブログ【パート3】』をご覧ください。
少し長くなりましたが、ハゼットのラチェットの評判や口コミ、レビューなどが気になる方の参考になれば幸いです。